『魔装機神F』発売記念 スペシャル対談 『魔装機神』〜その誕生から完結まで 寺田貴信 × 吉田渉 × 塚中健介

マサキとシュウ、二人の関係を変化させるために

塚中:ゲーム制作ではそういう歴史があったんですね。でも、ストーリー面でもいろいろな作品との絡みでずいぶんと長い物語になりましたよね。

寺田:2010年のリメイク版『魔装機神LOE』でシリーズがリブートしていますから、実際には中断している期間の方が長いんですが。後にスパロボのオリジナルロボットやキャラクターのみが登場する『スーパーロボット大戦ORIGINAL GENERATION』やそのリメイクである『スーパーロボット大戦OG』を立ち上げた時、『魔装機神』の世界観やストーリーを極力いじらずに持ち込んで、いつか『魔装機神Ⅱ』をウィンキーソフトさんに作ってもらおうと思ってました。リブート後の『魔装機神』シリーズでは、「他のスパロボOGのメカやキャラクターを登場させて欲しい」というご意見をたくさんいただいているんですが、それをやってしまうと結果的に『スパロボOG』と同じになってしまうので、そちら側からの干渉は極力抑え、『魔装機神』独自のストーリー展開をウィンキーソフトさんにお願いしたんです。阪田雅彦さんの頭の中にも、続編の構想がありましたからね。

吉田:ラ・ギアスの黎明期からの年表が存在していて、時系列ごとの出来事は決められているんです。どこをピックアップしてどう描くかは、ゲームを作りながら詰めていきましたが、『魔装機神Ⅱ』と『魔装機神Ⅲ』のストーリーは、かなり自由にやらせてもらいました。

寺田:塚中君がプロデュースしていた「無限のフロンティア」シリーズもそうですが、「スーパーロボット大戦OGサーガ」は、基本的に作り手の好きにしてもらうというスタンスでした。後で「スパロボOG」との整合性をとるのが大変ですけど、こちらから必要以上に制約を与えるのは良くないと思ったので。

塚中:でも、今回の『魔装機神F』では寺田さんからストーリーのアイデアを提案していましたよね。

寺田:『魔装機神F』を立ち上げる前、「少しでも多くの『魔装機神』シリーズと『スパロボOG』のファンの方、『第2次スーパーロボット大戦OG』や『スーパーロボット大戦OG ダークプリズン』をプレイして下さった方を取り込む」という課題が我々に提示されていたんです。1作目である『魔装機神LOE』、または『スパロボOG』しかプレイしておられないユーザーさんはいらっしゃると思うので、その方達にも楽しんでもらえるよう配慮しようと。また、完結編ということで改めて注目して下さる人もいらっしゃるかも知れませんし。その反面、『魔装機神』シリーズをずっとプレイしていただいている方達には、今まで以上にインパクトがあるストーリーを提示しようと考えました。その結果が、今回の『魔装機神F』の話です。実は、ウィンキーソフトさんから最初に提示されたストーリー・プロットは、『魔装機神Ⅲ』の話を受け継ぎ、マサキを主軸にしたものでした。私からの提案は、彼が行方不明になり、シュウが主軸になるという内容でした。もちろん、主役であるマサキが最初から出て来ないという展開が両刃の剣であることは、私にもわかっていましたが……。

吉田:ディスカッションはかなりの回数を重ねましたよね。

寺田:大まかな話の流れ、細かい部分の描写は吉田さん達にお任せしましたが、要所は両者の意見を出し合って決めました。実は、『第2次OG』や『ダークプリズン』を作っている時から、様々な謎を解いていかなければならない『魔装機神』完結編のストーリーは、シュウをメインにした方がいいんじゃないかと個人的に思っていたんです。『魔装機神』での彼の本当の目的は、シリーズ通しての大きな謎の1つですからね。あと、『スパロボOG』シリーズにも登場するマサキとシュウの関係を変化させたかったんです。この二人は、『魔装機神LOE』以前の『第2次』から出ている古参のキャラクターで、激突することもあれば、同じ目的のため一時的に協力することもあり、そういった関係に新たな変化をもたらそうと思いました。そのためには、マサキを行方不明にし、シュウが彼を捜すという展開がいいのではないかと。今までは、マサキがシュウを追うケースが多かったですからね。

吉田:今回のシュウの立ち位置については、互いの考えを述べ合って固めましたね。

寺田:その後、彼の機体であるグランゾンとネオ・グランゾンをどうするかということが問題になりました。『ダークプリズン』のように強い状態で最初から使えるようにするのもいいかと思いましたが、ストーリー上の危機感を出すために、あえてそれはなしにしようと。でも、シュウは今回の味方陣営の主軸に置かなければならない。そこで思いついたのが、彼を戦艦の艦長、つまり指揮官的なポジションに置くという案です。

吉田:寺田さんから「艦長でいきましょう」という提案をいただいたときは、びっくりしましたよ。でも、よくよく考えてみると、結構ハマるぞ、と。

塚中:そういうシュウのポジションの変化は、『魔装機神F』の第一報で発表した、大破したネオ・グランゾンのイベントカットでも表してたんですね。

寺田:完結編でラ・ギアスが滅亡の危機に瀕するという展開は最初から決まっていたんですが、本来は物語の中盤以降で描く予定でした。でも、私の方からお願いして、神聖ラングラン王国の中央部が封印され、マサキ達が行方不明になるという危機的な状況を序盤から見せることになり、それを端的に示す要素として、あのイベントカットの作成を吉田さんに依頼したんです。

吉田:作ってる側がいうのもなんですが、あれを最初に出すとは思ってませんでした(笑)

寺田:事前にそうするって言ってたじゃないですか(笑)。なんにせよ、今回の話は、なるべく危機感が出るよう配慮したつもりですが、賛否両論あると思っています。マサキとシュウの立ち位置は自分で決断したんですが、本当にそれで良かったどうか迷っている部分もいまだにあったり。ちなみに、塚中君がチーフ・プロデューサーだったら、「完結編で主役が行方不明になって、最初から登場しない」という提案を受けたら、どうします?

塚中:完結編なら、基本NGだと思います。

寺田:言い切ったな(笑)。いや、私も提案を受ける側だったら、NGにしたでしょうね。でも、自信満々というわけではなかったけど、今回のような展開にした方がいいという直感めいたものがあったんですよ。変な言い方ですけど。ただ、それが的中したかどうかは、『魔装機神F』をプレイして下さるユーザーさんの反応を見なければわかりません。発売後の皆さんのご意見が楽しみである反面、怖くもありますね。まあ、新作をリリースする時はいつもそうですけど、今回は特に。

寺田 貴信

株式会社B.B.スタジオ取締役

1969年生まれ、京都府出身。
スーパーロボット大戦シリーズのチーフ・プロデューサー。


吉田 渉

株式会社ウィンキーソフト所属

1972年生まれ、京都府出身。
『魔装機神F』の制作ディレクター。


塚中 健介

株式会社バンダイナムコゲームス所属

1984年生まれ、岐阜県出身。
「無限のフロンティア」シリーズ等のプロデューサーを務める。
他にも「PROJECT X ZONE」をワールドワイドに展開する等、様々な作品のプロデュースに携わっている。

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